栃木の国保 Vol.70 2020.3/ SPRING

動変容を促す取り組み(鳥取県S市) ②包括保健師が中心となり、フレイル予 防会議を設け、作業療法士、理学療 法士、運動指導士、栄養士など専門 職が連携しながら、個別支援計画を 作成、そこにフレイルハイリスク者 本人も参加し、健康づくり、フレイ ル対策に向けてのアセスメント行 い、介護予防の精度を高める取組 み(岐阜県A町) ③FC結果を活用し、自立度の低下し た高齢者を対象に自宅で生活をし ながらもしっかりとした食生活の 実現を目指した多職種協働による 食支援プロジェクトを立上げ、管理 栄養士、歯科医師・歯科衛生士、保 健師の専門職がかかわり、参加者 アセスメントと助言を行っている (東京都H市) ④フレイル予防のためのミニ講座を開催 し、サポーター自ら地域のサロン等、 社会参加できる場所を実体験を交え て具体的に紹介し、ハイリスク者に 対しては管理栄養士、歯科医師・歯 科衛生士、保健師の専門職がかかわ り、アセスメントと助言を行ってい る(東京都N市) ⑤要フォロー者へのフォローアップの為 に看護師 名 理学療法士 名によ る「まちの相談室」を設け電話また は面談よるアセスメント、積極的 に介入が必要と判断した場合、包括 につなげる(面談時に包括が同席も あり)、通いの場やフォローアップ講 座(別日)を伝えて参加を促す(東 京都T区)。 ⑥地域包括支援センターが介護予防ケア マネジメントの下で、FCの活動と データを活用し、さまざまな市民 動・社会参加の促進と介護予防・生 活支援サビスを連動させ、保健事 業との一体的な実施に向けての取組 み(沖縄県K村) ⑶フレイル段階に応じた具体的な政策体 系へ フレイル予防を基軸として高齢者の保 健事業と介護予防の一体的実施に向けて は、フレイル段階に応じた具体的な政策 として ①低リスク層に対するセルフマネジメン トの強化 ②中リスク層に対する意識変容・行動変 容に向けた既存事業への誘導 ③高リスク層に対するフレイルの実質的 改善に向けた積極的包括的介入が地 域に根付くことが、今後の政策課題 であると考えている。 フレイルサポーター或は、専門職がF Cの結果を活用することで参加者の気付 きとフレイルハイリスク者への適正介入 への誘導も可能となってきており、この 仕組みを活用して新しい介護予防政策に 転換されていくことが期待されている。 そしてこれらの取組みによって得られた 多くの改善成果は、総合事業による生活 支援の取組みや、医療と介護を一体的に 捉えた連携事業にも貢献していくことが 期待されている。 おわりに 健康づくりやフレイル予防活動は、そ の活動の効果が健康保険や介護保険デー タに反映されるまでには5~ 年、或は それ以上の年月を要するが、FCを受け た対象者(中~重度リスク者)に対する フレイル予防介入(食支援、社会参加支 援、運動支援など)の内容が個人毎に適 正に記録され、健康寿命の延伸即ち自立 する期間を延ばすことに成功すれば、比 較的短期間で当該地域の介護認定数或は 重度化を抑制する等の成果報告に繋げる ことも可能となってくる。 超高齢社会において、民間事業者に よる保険外フレイル予防商品・サービ スとフレイルハイリスク者を対象にし た公的な介入を含めて、広い視野で誰 もが必要なサービスを選択、或は享受 できることが地域社会の要課題とな りつつある。日本各地で始まったフレ イル予防を基軸した新しい介護予防 政策は、地域の豊かな人間関係と市民 活動の好循環(ソーシャルキャピタ) 構築の源泉になってており、その結 果として将来の介護給付費や介護保険 料の増大を抑制することを可能とし、 医療、介護給付適正化、持続可能な 介護保険制度の構築に資するものと確 信している。 2 1 神 かみ 谷 や 哲 てつ 朗 ろう 東京大学 高齢社会総合研究機構 特任研究員  岐阜県関市出身。静岡大学理学部修士課程を経て1982 年に花王入社。花王では研究開発部門、マーケッティング 部門でトイレタリー商品開発、化粧品開発を担当。2012 年7月退職し、同年8月から東京大学高齢社会総合研究機構 の特任研究員として従事。東京大学では、元厚生労働事務次官の辻哲夫教授、当 機構の飯島勝矢教授の下で、地域包括ケアのモデル事業の柏プロジェクトに参画 し、高齢者の健康づくり、フレイル予防、生活支援サービス、在宅ケアの在り方、 在宅医療関係の研究と東京大学の産学連携プロジェクトの一つである“ヘルスケ アネットワーク”で高齢社会における産・官・学・民共同研究を担当。 宇都宮市在住。 近著:「地域包括ケアのまちづくりとコンパクトシティに向けての提言」(山口幹 幸編著「コンパクトシティ」を問う(プログレス)) プロフィール 医師 医学博士 東京大学 高齢社会総合研究機構 教授 飯 いい 島 じま 勝 かつ 矢 や 1990年 東京慈恵会医科大学 卒業、千葉大学医学部附属病院 循環器内科 入局、東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座 助手、 同講師、米国スタンフォード大学医学部研究員を経て、2016年 より現職の東京大学高齢社会総合研究機構教授。 内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員、厚生労働省「高齢者の保健事業と介 護予防の一体的な実施に関する有識者会議」構成員、厚生労働省「全国在宅医療会議」 構成員。専門は老年医学、老年学(ジェロントロジー:総合老年学)。特に、健康長寿 実現に向けた超高齢社会のまちづくり、地域包括ケアシステム構築、フレイル予防研究、 在宅医療介護連携推進と多職種連携教育、大学卒前教育。 近著:「老いることの意味を問い直す 〜フレイルに立ち向かう〜」(クリエイツかもが わ)、「東大が調べてわかった衰えない人の生活習慣」(KADOKAWA)、「健康長 寿 鍵は“フレイル”予防 〜自分でできる3つのツボ〜」(クリエイツかもがわ) プロフィール 10 栃木県国民健康保険団体連合会「栃木の国保」 16

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